青いバラにまつわるお話

サントリーの青いバラ ブルーローズ アプローズ

   青いバラといえば、サントリー株式会社が開発した品種「青いバラ」(正式名称:SUNTORY blue rose APPLAUSE)が有名ですね。 このバラは2004年6月30日に発表、2009年11月3日に発売され、いずれも大きな話題となりました。
   「青いバラ」は青色を発色するデルフィニン/デルフィニジン(アントシアニン/アントシアニジンの一種)を作り出すために必要な酵素の遺伝子のcDNA(complementary DNA:相補的DNA)をパンジーから単離して、遺伝子導入することにより誕生しました。 つまり遺伝子組み換え技術によって作られた人工的な花色のバラです。
   遺伝子組み換え技術によって作られた植物は「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」(略称カルタヘナ法)によって、厳しく使用が規制されています。サントリーの青いバラは2008年1月31日にこの法律による「第一種使用規程」(切り花の用に供するための使用、栽培、保管、運搬及び廃棄並びにこれらに付随する行為)の承認を得たので、一般圃場での商業栽培が可能となったわけです。
   開発に至る詳細はサントリーグローバルイノベーションセンターの「青いバラへの挑戦」をご参照ください。

民間育種家:小林森治さんの青いバラ「青竜」

   サントリーの青いバラが人工的に作られた花色なのに対して、民間育種家:小林森治さんが作出した青いバラはいわば正統派の育種技術によって生み出されたバラといえるでしょう。左の写真は小林さんが作られた品種のうちでもっとも有名な青竜(1992年作出、1999年品種登録)です。(「青龍」と書かれることもありますが、登録品種名は「青竜」です。) 小林さんが作られた青いバラは他に「たそがれ」、「わたらせ」、「オンディーナ」、「紫の園」などがあります。
   小林森治さんの「青竜」はたしかにサントリー株式会社の青いバラに比べると花色は薄いですね。ですが空色のような青色を出すには、遺伝子組み換え技術による方法しかないと考えられいた常識を覆した画期的な品種ではないでしょうか。
   小林さんは2006年5月に亡くなられましたが、ご家族が氏のコレクションを「とちぎ花センター」に寄贈され、大温室で青いバラを鑑賞することができるようになっています。とちぎ花センター(栃木市岩舟町)では2009年から毎年5月下旬から6月上旬にかけて「ローズ・フェスタ」が開催されています。

民間育種家:河本純子さんの青いバラ「ブルーヘブン」


   岐阜県揖斐郡大野町にある河本バラ園の河本純子さんが作出されたブルーヘブン(2007年品種登録、別名セントレアスカイローズ)。もともと河本さんが所有されていた無名実生種に「カワモ・ブルー」(1995年品種登録)を交配して育成されました。別名「セントレアスカイローズ」は中部国際空港の開港にちなんで付けられました。この品種はタキイ種苗専売契約品種(タキイ種苗が作出者と契約して専属的に増殖・販売)です。

庶民的な青いバラ ブルームーン


   サントリーの「青いバラ」、小林森治さんの青いバラよりもっと以前は、青いバラと言えば紫色のバラを指していました。その代表格がブルームーン。作出年が1964年ですから今から50年以上も昔に作られたバラです。ホームセンターでも販売されており、栽培しやすいバラなので一般愛好家にも人気のバラです。
   ブルームーンはとても香りが良く、資生堂の研究によるとその香りはなんと156種類もの成分が含まれているそうです。なかでも特徴的な成分は(1)ベルベット感のある硫黄臭(2-Isopropyl-4-methyl thiazole、2-イソプロピル-4-メチルチアゾール)、(2)バイオレットの葉のようなグリーンノート(2E-Nonenal、2-ノネナール)、(3)フレッシュ感のある香り(Mintsulfide、ミントスルフィド)の3つで、中でも1番目のベルベット感のある硫黄臭が自然なブルーローズ香気へ大きく寄与しているとのことです。詳細については「TMS研究 2015年1号」に掲載された「化粧品の香料開発」(資生堂リサーチセンター城市篤著)をご参照ください。英語の論文はFlavour and Fragrance Journalの2013年5月号に掲載されました。こちらでABSTRACT(要約)だけは無料で読めます。
   資生堂からはかなり以前に「ばら園ブルーローズ」という名前の香水が販売されていましたがすでに販売終了となっています。城市氏の研究成果により、再びブルーローズのフレグランス が販売されることが期待されます。
   右の香水はサントリー ブルーローズ アプローズの香水です。

最相葉月さんの著書「青いバラ」

   青いバラに関心を持つ皆さんにはぜひ読んで戴きたい、最相葉月さんの著書「青いバラ」。初版は2001年5月の出版です。第4章でサントリーの青いバラ開発プロジェクトに1991年から参画した研究者、田中良和さんも登場します。
   "ミスター・ローズ"、故鈴木省三(せいぞう)さんとの対話も大変興味深い内容です。左のバラは鈴木省三さんが1984年に発表した紫雲。美しく育てやすいハイブリッドディーローズです。
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