バラの栽培特許
本項ではバラの栽培特許にまつわるお話をしています。
バラの栽培特許(その1) アーチング栽培法 (特許切れ)
アーチング栽培法とはバラの花を取る枝(採花母枝)以外の枝をアーチのように曲げる栽培方法です。 こうすると株元によく日があたり、たくましい新梢が発生し、高品質のバラが育ちます。 折り下げた枝の形状がアーチ形になるので「アーチング栽培法」と名付けられました。 この栽培方法は日本では下記3つの特許が取得されていましたが3件とも特許が切れたため、現在では自由に使用できる栽培方法になっています。アーチング栽培法は主として養液栽培で用いられる栽培法です。
- 特許第2003777号(特開平03-191716) / 登録:1995年2月20日
(この特許は出願日1989年から20年を経過したので権利期間が終了しています) - 特許第2137238号(特開平04-330231) / 登録:1998年7月10日
(この特許は2011年4月30日で失効しています) - 特許第2139951号(特開平04-341123) / 登録:1999年1月22日
(この特許は2011年5月17日で失効しています)
下図は最初にアーチング栽培法として出願された特許第2003777号の図です。
定植後しばらくの間は出てくる枝を斜め下方向に折り曲げて育てていきます(上図の2の枝)。その枝についたツボミはピンチしてしまいます(上図の1)株が十分充実してから、株元から延びてくるベーサルシュート(basal shoot)(上図の3)を切花として収穫します。収穫の際は必ずシュートの根元から切り取ります。
バラの栽培特許(その2) 1本残し剪定法 特許第3754932号
1本残し剪定法とは三重県伊勢市の農家さんグループが考案した栽培技術です。 特許の名称は「バラの栽培方法」(特許第3754932号/登録:平成17年12月22日)。
アーチング栽培法は枝を曲げるときに、枝を折らないよう 細心の注意を払う必要があり、作業もかなり重労働です。 これに対して「1本残し剪定法」は、1年に1回行われる剪定時に「力枝」と呼ばれる枝を1本だけ残し、あとの枝は株元に近いところで すべて切ってしまうという手法です。左の図は特許第3754932号からの転載です。
この方法だと株が毎年若返り、トータルの終了が多くなる方法です。この特許は日本ばら切花協会の会員ならば特許実施料は不要で無償で利用することができます。 本特許の存続期間満了日は平成34年4月16日です。
バラの栽培特許(その3) ハイラック法 (特許切れ)
ハイラック法は広島県の矢吹純氏、草野産業㈱による発案です。 出願特許の名称は「バラの切り花栽培方法」(特許第2140260号/登録:平成11年2月19日)。 この特許は平成21年3月6日に権利が消滅しています。
ハイラック法はバラの主枝すべてを、高さ1m~1.2mで折り曲げ、折り曲げた付近から出るベーサルシュートを伸ばして採花する手法です。
この手法の利点はバラ全体の背丈を人間が作業しやすい高さに出来て作業効率が良いこと、長い花が採花できること、 養液栽培ではない土耕栽培でも利用できること、夏季剪定が不要なことです。
バラの栽培特許(その4) レベリング法 (特許切れ)
レベリング法は広島県のバラ栽培家、今井清さんと横道耕一さんによる発案です。特許の名称は「切りバラの栽培方法」(特許第3444707/登録:平成15年6月27日)。この特許は平成24年6月27日に権利が消滅しています。
レベリング法は50-60cmと比較的短くて良いホームユース用のバラを収量多く採花する方法です。苗は千鳥2条植えで定植し、右側の株から出たベーサルシュートは左側に水平に折り曲げ、左側の株から出たベーサルシュートは右側に水平に折り曲げます。植物は頂芽優勢の性質があるため、株元や倒した枝から腋芽が複数出てきますので、それを伸ばして採花します。 左の図は特許第3444707号からの転載です。